カァ……
カァ……血のように赤い夕焼け空に無数のカラスが空を飛び、不気味な鳴き声を響かせている。
その空の下。敵意を込めて私を見る大観衆の中を、ロープで引きずられながら歩かされていた。
貧しい麻布の服に着替えさせられ、半ば強制的に処刑執行人によって連行されている私の姿を観衆達は面白そうに見つめている。罪状は、公金の横領と『聖なる巫女』の暗殺未遂事件。
私は贅を尽くし、国費を潰しただけでなく、夫が寵愛する『聖なる巫女』の命を狙った罪で今から城下町の中央広場で公開処刑されるのだ。
素足で歩く地面は質が悪く、時折小石が足裏に突き刺さってくる。
その為、地面には私の足から流れでた血が点々と続いている。「う……」
私は痛みを堪えてこれから処刑される為に、自らの足で断頭台へと向かわされていた。
ズズ……
ズズ……地面を引きずるような重い音は私の右足首にはめられた鉄の足かせ。
チェーンのその先には丸い鉄球が繋がっている。 これは私が逃げ出さないようにする為につけられた重りである。尤も……そんなことをしても今の私には逃げる気力など、とうに無くしているのに。
長く美しかった私の自慢のプラチナブロンドの髪は処刑しやすくする為に、冷たい牢屋の中で耳の下でバッサリ乱暴に切られてしまった。
あの時から、私の中で生き続けたいという気持ちが髪を失ったと同時に完全に断たれてしまったのかもしれない。
「ほら! さっさと歩け!」私を縛り上げているロープをグイッと処刑執行人が引っ張った。
「あ!」
思わずその勢いで、前のめりに倒れてしまう。
ドサッ!
両手を縛られ、バランスがうまく取れなかった私は無様にも地面に転んでしまった。転んだはずみで、肘や手首を擦りむいてしまう。
途端に広場にドッと観衆達の嘲笑が沸き起こる。
「ほら、見ろよ。あの悪女の無様な姿を」
「ああそうだ。俺たちはこんなに辛い生活をしているのに……贅沢しやがって」
「早く死んでしまえばいいのに」
等々……辛辣な言葉を浴びせてくるも、私は黙ってその言葉を受け入れる。
何故なら彼らが私を憎むのは当然だから。けれど……私はそれほどまでに贅沢をしただろうか?
『聖なる巫女』の命を狙ったと言われているけれども……夫に近づくなと脅しの手紙を何通か届けさせたことが罪に問われるのだろうか?
お茶のマナーを知らない彼女をお茶会に招き、恥をかかせたことが…それほど重罪なのだろうか?
自問自答していたその時。
「ほら! さっさと立て!」
ヒュッ!
処刑執行人の鞭が飛んでくる。
バチンッ!
振り降ろされた鞭は私の服を破き、叩かれた背中から小さな血がほとばしる。まるで焼けた鉄を押し付けられたかの様な激痛が背中を走る。
「……っ!!」
私は無言でその痛みに耐え、ゆっくり起きあがった。
そう……私の国は敗戦し、この国の属国となってしまった。けれども……それでも私は王女だったのだ。
王族ともある者は決して人前で情けない姿を晒してはいけない。それが例え、眼前に死があろうとも。 私は今は亡き父に、そして母にそう言われて育ってきた。 私が立ち上がったのを目にした執行人はフンと鼻で笑うと、再びロープを強く引いて断頭台へと向かわせた――****
やがて私の眼前に赤い空の下、ひときわ高い壇上に設置された断頭台が不気味なシルエットを浮かび上がらせて現れた。
あの鋭い刃で、私はこれから首を落とされるのだ。
一瞬ゴクリと息を飲む。
「階段を上れ。もし逃げようとしたり、抵抗するなら……足を切り落とす」
背筋が凍るくらい、ぞっとする声で執行人が私に告げた。
けれど私は死ぬ覚悟はもうとっくに出来ていた。「大丈夫です。どこにも逃げるつもりはありません」
気丈に答えると、1人で木の階段を1歩1歩登ってゆく。
やがて壇上を登りきると、眼前には私の夫……アルベルト・クロムが『聖なる巫女』と呼ばれるカチュアと並んで座る姿が目に飛び込んできた。
アルベルトは冷たい瞳で私を見ている。一方カチュアは私を見て震えていた。
何故彼女が震えるのだろう?
これから処刑されるのは私なのに。それとも私の姿を見て怯えているのだろうか?
じっとカチュアを見つめると、彼女はビクリと肩を震わせアルベルトの胸に顔をうずめた。
途端に彼が私を睨みつけてきたので、私は慌てて視線をそらせた。そこへ断頭台に先ほどの執行人が上って来た。
執行人は乱暴に私の腕を掴んで強引に木枠の中に頭を入れる。ガシャン!
更に上から木枠がはめられ、私の首は完全に固定されてしまった。するとアルベルトが立ち上がり、観衆に向けて声を張り上げた。
「これより、稀代の悪女であるクラウディア・シューマッハを公金の横領罪と『聖なる巫女』の暗殺を謀った罪で処刑する!」
「……」
私は黙ってアルベルトの言葉を聞いていた。
不思議と恐怖は無かった。ただ……来世があるなら、今度は普通の人生を送りたい。
それが私の願いだった。 「やれ!」アルベルトの掛け声と共に、刃物の滑り落ちる音が聞こえ、私の意識は飛んだ。
こうして私は若干22歳と言う若さで一度目の死を終えた――「リーシャ、もう出てきてもいいわよ」リーシャの乗る馬車に戻ると、外から声をかけた。「あ……クラウディア様……」馬車の扉が開き、リーシャが恐る恐る降りてきた。「大丈夫? リーシャ」リーシャの身体は酷く震えている。「よ、良かった……クラウディア様!」リーシャは涙を浮かべると突然抱きついてきた。「ど、どうしたの? リーシャ」するとリーシャは私に抱きついたまま涙混じりに言った。「だ、だって……クラウディア様のことが心配でたまらなくて……で、でも絶対に馬車から出てこないように言われていたから様子を見ることも出来なくて、不安でたまらなくて……でも良かった……! クラウディア様が無事で……!」「リーシャ……」何てリーシャは良い娘なのだろう。こんなにも私のことを心配してくれるなんて。「大丈夫よ、リーシャ。だって私達には心強い仲間がいるでしょう?」「仲間……。スヴェンさんのことですか?」リーシャは涙に濡れた瞳で私を見る。「ええ、そうよ。だから大丈夫よ」『エデル』に辿り着いた段階で、私たちはスヴェンとお別れすることになるけれども、少なくともあの国に辿り着くまでは彼が一緒なのだ。「そうですよね……スヴェンさんが一緒ですから大丈夫ですよね?」「勿論よ。だから何も心配する必要は無いわよ?」「はい……分かりました!」元気よく頷くリーシャ。「それじゃ、早速手伝ってくれる?」「はい。クラウディア様のお願いならどんなことでも聞きます。それで私は何をすればいいのですか?」「それはね……。2台目の馬車の荷物を台車に乗せて野戦病院に運ぶことよ?」私はにっこり微笑んだ――****「え……?」荷馬車に戻った私は驚きのあまり、目を見開いた。積んである荷物が松明を手にしたユダの指示の元、『エデル』の兵士たちによって台車に積み込まれていたからである。「おい! その箱の中には何が入っているか分からないから慎重に積むんだ!」ユダは仲間たちに命令を下している。「ああ! 分かった!」「次はこれを運べばいいな?」あれほど私に反抗的な態度を取っていた『エデル』の兵士たちは私の持ってきた荷物を丁寧に運んで台車に積んでいく。「クラウディア様、一体これは……?」リーシャが唖然とした様子で問いかけてきた。「さ、さぁ……私にもさっぱり……」すると、ユダが私が戻
「それでは……その御方は本当に王女さまなのですな?」町長さんがこちらを見た。「はい、そうです。私は戦争犯罪を犯した『レノスト』王国の生き残りの王女である『クラウディア・シューマッハ』です」私は敢えて「戦争犯罪」「生き残り」と言う単語を交えて自己紹介した。「そうでしたか……本当に王女様だったのですな?」町長さんの背後では人々がざわめいていた。「まさか本物の王女だったとは……」「嘘か冗談かと思ったよ」「どう見ても王女には見えないぞ?」「当然だろう? あんな格好してるんだから」 皆が驚くのは無理も無いことだった。何しろ今の私は若草色の麻のロングワンピースにエプロンドレス姿なのだ。これでは侍女どころかメイドにすら見えないかも知れない。 『アムル』の村からこの姿で馬車に乗り込む際、流石に全員が驚いた目で私を見た。リーシャなどは無理やり着替えをさせようとした程だが、私は頑なに着替えを拒んだ。何故なら、この姿で『クリーク』の町に降り立つ必要が私にはあったからだ。そこで私は集まっていた人々に近づくと町長さんに話しかけた。「貴方がこの町の町長さんですよね?」「ええ、そうです。私は町長のポルトと申します。それで一体今頃この町に何の用ですか? いくら医療用の備品や薬をお願いしても一向に返事も頂けず、梨の礫だったではないですか」町長さんは嫌味を含ませて私を睨みつけてきた。「何だと……?」スヴェンが背後で殺気に満ちた声をあげる。「スヴェン。お願い」小声でスヴェンに訴える。「……分かった……」私は一度深呼吸すると頭を下げた。「町長さん、皆さん。本当に申し訳ございません。遅くなってしまいましたが、清潔なシーツや上掛け、タオル、それに包帯や薬といった医療品を用意させていただきました。あちらの馬車に積んでありますので今、持って参りますね?」「え……?」私の言葉に町長さんの目が見開かれる。背後にいた人々も再びざわめき始めた。「おい、聞いたか? シーツだってよ」「包帯……不足していたよな?」「薬も必要だったんだよ……」「私が運びますので、皆さんはあちらの病院でお待ち下さい。町長さん。荷物を運びたいので、もし台車があればお借りしたいのですが」「あ、ああ……台車ならあの小屋の中に入っておりますが」町長さんが指さした先には小さな小屋が建っていた
「スヴェン、一体どういうつもりなの?」突然スヴェンが私の前に立ちはだかり、『クリーク』の町民達に向って声を荒げる姿に戸惑いを感じずにはいられなかった。「あいつ等が敵意のある目で姫さんを睨んでいるから助けに来たんだ。俺は姫さんを守るって決めているからな」「スヴェン……」そして再びスヴェンは町民たちに視線を移し、睨みつけた。「チッ! あいつ……余計な真似を……っ!」ユダが腹立たしげに言っているが、まさにその通りだ。スヴェンの態度に彼等はますます敵意を顕にこちらを睨みつけている。ここは私が何とかしなければ。「スヴェン……お願い、落ち着いて。ここは私に任せてあの人達と話をさせてもらえないかしら?」「だが、姫さん! あいつ等凄い目で姫さんを睨んでるんだぜ? あんな敵意のある眼差しに姫さんが晒されるなんて……俺は耐えられない!」スヴェンはこちらを振り返ることなく、叫んだ。「ええ、分かっているわ。でもあの人達は私を恨んでも当然なのよ。お願いだからどうか私に話をさせて?」「姫さん……」スヴェンが私を見た。「……クラウディ様の言うとおりにするんだ」ユダが意外な台詞を口にした。「お前! 姫さんを見捨てる気か!?」険しい顔でユダを睨みつけるスヴェン。「スヴェン、お願いよ」これ以上あの人達に敵意を向けるわけには行かない。私は頭を下げた。「姫さん……」その時、とうとう町民たちは痺れを切らしたのか口々に文句を言い始めた。「おい! いい加減にしろ!」「今更何しに来たんだ!」「帰れ帰れ!」「この人でなしめ!」「何だと……!」ついにスヴェンが我慢できなくなったのか、右手で腰に差していた短刀を引き抜いた。「やめて! スヴェン!」とっさにスヴェンに飛びつくと、短刀を握りしめた彼の右腕を両手で必死に押さえつけた。これには流石に周りで見ていた人々も、スヴェン本人も驚いた。「姫さん! 危ないじゃないか!」狼狽えた目で私を見るスヴェン。「駄目よ、お願い。スヴェン、どうか剣を抜かないで。私はこの町の人達に謝罪とお詫びをする為に『エデル』の人達に連れてきてもらったのだから! どうか……ここは私に任せて! お願い!」必死でスヴェンに訴えた。「え……!?」ユダの目が見開かれる。私の言葉を耳にした町民達も驚いた様子でこちらを見ている。「わ、分か
馬車を降りないほうがいい。私の言葉が余程驚いたのだろうか? リーシャが目を見開いた。「何を仰っているのですか? それって……馬車から降りたら危険と言っているようなものじゃないですか! クラウディア様がお1人で馬車から降りるなんて駄目ですよ! だったら降りる時は私も一緒です!」リーシャは私の右手を両手で握りしめてきた。リーシャはとても責任感が強い娘だった。自分の身の危険も顧みず、私を助けようとする。そして私はそんな彼女に甘えきっていた。けれど、今の私はもう違う。自分の娘と年齢も然程変わらないリーシャを危険な目に遭わせたくない。「聞いて、リーシャ。私は戦争犯罪を犯した王族の1人なの。だから責任を負わなければならないのよ」リーシャの髪を撫でながら言い聞かせる。「で、ですが……クラウディア様、私は専属メイドなのです。クラウディア様をお守りするのが私の役目です」声を震わせてるリーシャ。「いいえ、それは違うわ。専属メイドを守るのが……主人としての私の務めなのよ」「クラウディア様……」その時、馬車がガタンと音を立てて停まった。「……停まったわ」私はじっとリーシャの顔を見た。「ク、クラウディア様……」リーシャが私の袖を掴んで離さない。「いい? リーシャ。ことが収まるまでは……絶対に馬車から降りないで。お願いよ」「で、ですが……!」その時。「クラウディア様。今夜はこの町で宿泊致しましょう」不意に馬車の外から声をかけられて、扉が開かれた。扉を開いたのは……。「分かったわ、ユダ」目の前に立っていた人物はユダだった。「……1人で降りられますか?」ユダが私に尋ねてきた。「え? ええ。勿論よ。いい?リーシャ。まだ馬車から降りては駄目よ?」「は、はい……」私の決意を知ったのか、リーシャは頷いた。「では降りて下さい。ここは『クリーク』と言う町です。クラウディア様ならここがどのような場所なのかお分かりになりますよね?」ユダは私に問いかけてきた。「ええ知ってるわ。この町は『レノスト』国の領地でしょう?」「その通りです。町民達には事前に今日はこの町に宿泊させてもらうことは伝えてありますので」ユダは無表情で状況を説明した。「そう、分かったわ。なら……私からも挨拶しないとね」笑顔でユダを見ると、私は手摺を握りしめてゆっくり馬車から
小1時間程休憩を取ると、再び馬車は『エデル』へ向けて走り出した。スヴェンのお陰で喉の乾きもお腹も満たされた私達は馬車の窓から外を眺めていた。馬車は森を抜け、再び荒れ地を走り続けている。日は少しずつ傾きかけ、いつしか空は青とオレンジのコントラストの色に染められていた。「きれいな夕焼けですね……」リーシャは水平線が広がる大地の空に映える見事な夕焼けに、すっかり目を奪われていた。「ええ、そうね」私は返事をしたが、これから訪れることになる町のことを考えると心が休まらなかった。「今夜は何処に泊まるのでしょうね」リーシャがポツリと呟いたので、これをきっかけに次の町のことについて説明することにした。「多分、次の滞在先は『クリーク』という町になるはずよ」「まぁ、町ですか? でしたら大きな町なのでしょうね。それならきっと宿屋もありますよね? 入浴も出来るでしょうか? 私、身体の汚れを落としたくて」リーシャには悪いが、恐らくそれは無理だろう。でも期待している所にわざわざ水を差すこともないだろう。「そうね、入浴……出来るといいわね」「やっぱりそうですよね?『アムル』の村ではお湯で濡らしたタオルで身体を拭くことしか出来ませんでしたから。あ〜今から楽しみです……」リーシャは余程お湯が恋しいのだろう。「フフフ……リーシャったら」無邪気なリーシャを見ていると、ふと娘の葵のことが思い出された。……私が死んだ後、家族は皆どうしたのだろう。「何故クラウディア様は次に立ち寄る場所をご存知なのですか?」センチメンタルな気分になりかけた時、リーシャが話題を変えてきた。「ええ、それはね……『クリーク』と言う町も『レノスト』国の領地だったからよ」まさか、回帰前に立ち寄った場所だからとは言えるはずもなかった。「そうだったのですね。私って、まだまだ勉強不足ですね」「いいのよ、もう。これからは『エデル』国について学べば良いのだから」「ええ、そうですね」リーシャは元気よく頷いた。「それでね、リーシャ。次の『クリーク』と言う町なのだけど……実は大きな野戦病院があるの。その町ではいまも戦争で怪我や病気になった人達が……数多くいるのよ……」「え……? そ、そうなのですか?」リーシャの顔が曇る。「ええ。だからきっと、その町でも戦争を起こした王族として私は責められるは
「え?」「どうしたんでしょうね?」何故停車したのか分からず戸惑っていると馬の足音がこちらへ近付き、馬車の窓から突然スヴェンが覗き込んできた。「姫さん、リーシャ」「え? スヴェン? どうしたの?」「どうしたも何もここで少し休憩を取ることにしたんだよ。ずっと馬車に乗って疲れただろう?」スヴェンはまたがっていた馬から降りると、馬車の扉を開けた。「さぁ、姫さん。降りてこいよ。リーシャも」スヴェンが手を差し伸べてきた。「あ、ありがとう」戸惑いながら、スヴェンの手を借りて馬車を降りると『エデル』の兵士達も既に休憩の準備に入っていた。馬車が停まった場所は小川が流れていた。「まぁ……とてもきれいな場所ね」「ええ、本当ですね」私とリーシャは目の前の美しい光景に目を奪われていると、スヴェンが声をかけてきた。「姫さん、リーシャ。喉乾いただろ? ほら」そして私達の前に水が入った木のコップを渡してきた「まぁ、ありがとう」「ありがとうございます!」私達は早速コップの水を飲んだ。冷たい水が乾いた喉を潤してくれる。「……美味しいわ……」「ええ、美味しいですね。クラウディア様!」」リーシャは余程喉が乾いていたのか、ごくごくと一気に水を飲み干してしまった。「アハハハ……そんなに慌てなくても大丈夫だ。水はそこの小川から汲んだんだから」スヴェンは笑いながら教えてくれた。「そうなのね? とても美味しい水ね」「はい!」「お腹も空いたんじゃないか? 森の中を馬で通り抜けながら果実をもいでおいたからこれも食べるといい」スヴェンは腰に下げていた麻袋を外すと、紐を解いて中身を見せてくれた。見ると中にはリンゴやオレンジといった果実がぎっしり入っていた。「わぁ〜美味しそうです」お腹が空いているリーシャはとても嬉しそうだった。「スヴェン……いいの? こんなに沢山貰っても」「その……姫さん達が運んできた食料、全て俺たちの村に寄付してくれたんだろう? これは……その、俺からのお返しの気持ちだよ。こんなことくらいしかしてあげられないけどさ」スヴェンは何だか申し訳なさげにしている。「何を言ってるの? こんなに色々良くしてもらえてとっても嬉しいわ。ありがとう。スヴェン」笑顔でスヴェンにお礼を述べると、何故か彼は顔を真っ赤に染めた。「い、いや。そう言って貰える